SAH会では、12/3に開催する「気候に配慮した長野市のまちづくりワークショップ」に対して、
支援金30,000円を送ることを11/16の定例会で了承しました。
このお金は、当日の運営費の一部として活用されました。
「気候に配慮した長野市のまちづくり」のワークショップ
レポート
主  催
信州大学 工学部
独立行政法人 建築研究所
独立行政法人 国立環境研究所
後  援
日本建築学会都市環境気候図小委員会
日  時

場  所
平成17年12月3日(土)10:00〜17:00 

信州大学工学部 総合研究棟 1階 大会議室
長野市若里4-17-1  TEL:026-269-5363

参加無料
内  容
ワ−クショップの手順
@. ドイツの研究者(英語と日本語の同時通訳)による地域における気候の実態と都市計画のあり方に関する講義を聴講し、ワークショップを行う上での参考とする。
A. 担当者より、都市の現況図、植生図、気候図などに基づいた対象地域の概況と、ワークショップの実施方法について説明を受ける。
B. 上記の@、Aを参考にして、5〜6名を1グループとしたメンバーで、長野市中心市街地の将来像を白地図上に描く。
C. 作成した図についての発表と参加者による討論を行う。
D. 後日、成果内容を行政担当者に資料として提示する。


講義風景 ドイツの研究者 講義概要 (抜粋)
クトラー教授(エッセン大学)
いかに我々の都市部の気候を改善するか?都市部の地表熱及び車や工業地帯からの排気で大気が汚染されている、という問題について対策は、 @.地表面の温度を下げる。A.農村から冷たい空気を送る。B.汚染の元を改善する。C.風を通し換気を良くする、などがある。それらの具体的行動対策としては、@.省エネ、つまりエアコン発電機、暖房などを極力使わない。A.車の使用を減らす。B.周辺からの新鮮な空気をもっと取り込むべき。そのために換気の経路を考えるべき。C.植物をもっと植えるべき。地表面・壁・ファサード等々。 放射(地表面)熱、大気の汚染。壁の色、植生、換気の経路について、放射温度対策として壁の色を考えることは重要。西側に面している壁(材質は同じ、気温30℃の時)それぞれの表面温度は白−40℃、黒−65℃。これは放射量にすると白−500W/1u、黒−800W/1u(※100W電球8個分)。つまり黒い壁を白色にするだけで300W/1u減る。壁に蔦を這わせることも有効。線路沿いが一面の草、などは土埃対策にもなる。植物は陰をもたらし蒸散の効果もある。

ユルゲン・バウミューラー氏(シュツットガルト市政府環境保線局)
シュツットガルトはヨーロッパのほぼ中心に位置し、人口は約59万人。ドイツではいろいろな法律があるが、都市の気候についても例外ではない。都市部の熱に対する対策として都市緑化について新しい建物に屋上緑化を義務付けているほか、既存の建物には1u約2500円の補助金を国が支給している。屋上がフラットなビル、住宅ではシュツットガルトでは当たり前になっている。 グリーンルーフは一日を通して温度は同じ20℃位。熱環境が良くなり暖房エネルギーの低減が図れ、気候上のメリットがある。他に屋根の耐候性がよくなり屋根にかかるコストが低減され屋根の寿命が2〜3倍伸びる。屋根のデザインとして見た目が美しくなり、屋根スペースの有効利用と言える。つまり保水が出来、小動物が屋上に住める。大体10〜20°の勾配屋根、住宅では30°の勾配まで大丈夫。ベンケイソウなどを植える。例外としてソーラー設備が屋根にある場合。また、会場からの質問として、かけたコストと効果は見合うものとして実証されているか?また、屋上緑化によるヒートアイランドの改善は?には、はっきりしたものは出していないが、屋根寿命が2・3倍伸びることから損はない筈。また、はっきり改善できたというデータは数字でだしてないが、改善したと言える。とのことであった。

カシュナー教授(カッセル大学)
都市全体の空気や風の流れを良く把握して都市計画を作成することが大切。空気の動きを配慮し、風が通るところに建物を建てるべきではない。風の流れや場所の使い方に合わせて建物や道路の幅などを決め、都市をデザインをすべき。


対象地域の概要
対象地域 今回のワークショップでは、左図に示した長野市の中心市街地を対象とした。


対象地域の模型
当日展示された対象地域の模型


信州大学 岩井先生
SAH会事務局でもある主催者のおひとり
信州大学岩井先生





ワークショップの参加者

  ・ 対象地域に居住の方
  ・ 行政関係者
  ・ 都市計画コンサルタント、建設会社
  ・ 学生
  ・ 建築、気象研究者


ディスカッションの様子 参加者は約140人。1グループに均等に職種の違う参加者が入るように10グループに分かれて、長野駅から善光寺下にかけて南北約2km、東西約1.5kmの地域について「まちづくり構想」を作成した。
提案では、この地域に西〜北西から強い風が裾花川に沿って吹いていることから、この風をいかに都市化されつつある駅前などに入れるかを考え、この風を遮らないよう道路整備を考えたり、風を遮っているのでは、と考えられる県庁舎を流線型の建物にする、街の中心部に移転する、などの案が出た。また駅前を中心に屋上緑化や壁面緑化、中央通りを中心としたグリーンベルトの増強を行い、緑の少ない街並を改善する。車の進入を制限し、駐車場は進入を制限された区画の外側になるべく計画し、出来れば地下に入れ、緑化し、それ以外の活用を考える、などの提案がなされた。

まとめ
ドイツの研究者からは、「中心街を見せてもらって屋上緑化のポテンシャルはあると思った。もっと緑の提案、緑化のコンセプトが必要と思う。」「ドイツでは地価が高いのでこんなに駐車場はない。駐車場の活用・コンセプトを考えるべき。交通の問題もあるので、車の進入を規制する のは難しいと思うが、車を締め出すだけでなく、道幅を広げ木を植え木陰でオープンカフェなども良いと思う。風の道・緑化を考え、周辺のグリーンベルトを中心に持ち込む。」「グリーンベルト(緑湿地)は重要。景観としての側面も。」「暗渠になっている水路をせせらぎに復活させるのはとても良い。」等の意見・感想があった。また主催者は「これからの長野に興味が持てる内容。長野オリンピック後、跡地のダイエーが撤退等あり、これからの長野市のまちづくりはしっかり考えないといけない。原体験と市民の声、専門外の人の意見を聞き、考え、大変意味のあるワークショップが出来たと思う。今日の発表内容をまとめたものは、年度内に行政関係者に提出したい。」と話した。

(以上、報告SAH会事務局/北村)
 

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