| 山下会長 今月のつぶやき BUCK NUMBER |
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(2006/1/6) SAH会の会長の山下です。あけましておめでとうございます。 今年も皆様にとって飛躍の年でありますことを祈念いたします。 昨年の建築構造偽造事件は、建築に携わるものにとって衝撃でした。国会喚問、警察捜査を通じて何らかの運動、大きなうねりを作っていかなければ思うのですが、国、建築学会、JIAほか建築諸団体に自浄作用が働くかと考えると今のところ疑問です。徹底的な責任追及と厳罰によることが抑止効果になりうるのですが、それをしてもすでに購入した人の救済をどうするか、新耐震施工以前の建物をどうするか、その後において果たして不正な建設はなかったかとなると調査を、追求を拡大しても膿みを出し切って、地震に耐えられ、長寿命で快適な住宅に更新していかなければなりません。SAH会の皆様には、このような目で見られるのは心外と言った気持ちが多いかと思いますし、それが当然なことなのです。この件は、今後とも見守って行きつつ、何らかの道が開かれることを期待してやみません。 SAH会は、今年6月の総会で19期になります。今や信州で一番古い研究会です。不況も続いて幾分停滞気味でしたが、少しずつ明るくなりつつある中で、私はSAH会の会員である信越BIBとの共同研究で、とにかく徹底した高気密高断熱の住宅で無暖房を実現させる目的で工学部キャンパス内に実験住宅を建設しました。何回かにわけて、無暖房住宅について速報をしましたが、以降のことに少し触れてみます。
昨年8月末に工学部キャンパス内に完成しました無暖房実験住宅は、昨年11月12月でも人体模型2体とTV、冷蔵庫、照明などで寒さを感じない無暖房住宅を実現しました。新聞によりますと1946年以降で一番の寒波のときでした。併せて本当に快適なのかについて、秋季、冬季12月中旬に人体模型1体と男子1名が宿泊する実験をしてきました。女子の場合は、人体模型を除いて2名宿泊をしました。結果は暖かいことが実証されました。新年早々に3回目の宿泊実験をしてまとめるつもりです。実験住宅とはいえ私は予想以上の結果であると考えております。この無暖房住宅は、特殊な技術が必要とは考えておりません。単純に原点に戻って断熱材で厚く覆った器です。今回は、壁に52cm、天井に70cm、床に気密シートを敷き詰めた上に10cmのスタイロホームと30cmのグラスウールを敷き詰めて徹底した気密化したものです。実験住宅だけに実用的な工法ではありません。「無暖房住宅とは、十分に断熱、気密を高めた器を作って必要な量の換気を常時行なった状態で特別に暖房機器を設けなくとも日射の取得、人体の発熱、照明、電気製品など廃熱で室内の室温を維持できる状態の住宅です。」勿論、留守などで発熱源が少なくなると室温を維持はできなくなることも配慮して最小限の暖房機器は設けることは必要です。私は、地元の工務店がこの技術を自分のものとして、多様な購入者に対応できるようにしておくことが必要であると考えております。それには、断熱材、気密化に要する費用と暖房設備にかかる費用のバランスをどう解決するかをそれぞれ会員が工夫することです。いくら無暖房住宅といってもこれまでの工法の住宅よりコストが大幅に上がっては注目されないと思います。もっともただコストで勝負するのではなく、購入者が地球環境にやさしい、省エネルギー、長寿命な住宅・・・などに理解していれば、多少高くても買うと購入者はいるはずです。 例えば車で言うと、実用本位の軽乗用車かハイブリッド車にするかの選択と考えれば、十分低コストの住宅と共存できると考えております。私は、昨年何回か会員に是非無暖房住宅に挑戦してほしいと呼びかけところ、今年続々と無暖房住宅が誕生しそうです。2月はじめに戸建住宅、6月に駒ヶ根に本格的な外断熱集合住宅が完成します。8月ころまでに無暖房住宅を作るべく現在設計段階の会員とか、既存のRC住宅を外断熱化してサステナブル住宅に挑戦する会員も出てきています。いずれも実現ができそうです。SAH会の会長であるとともに大学人として測定解析評価に積極的に後押しをしたいと考えております。大学との共同研究に発展する場合は、守秘義務契約もして、皆様のやる気を尊重したいと考えております。私は、どのSAH会員も実現できる力を持っていると信じておりますので、挑戦してみることを勧めます。 ほかに今年は、皆様の建築作品をそれぞれ自分の考え、購入者とのやり取り、シミュレーション計算による性能数値、実測の気密性能などをできる限り統一した書き方でまとめて1冊の雑誌を刊行する予定であります。 今年の1月15日までに会員がこれまでに建築した代表的な住宅の図面、コンセプト、購入者とのかかわりについてのKey wordを集めて、17日に有志で会友の矢澤直司氏の司会で座談会を開催します。奮って参加ください。 合同研究会が今年は北方圏住宅研究会の25周年記念をかねて札幌で開催されます。皆様奮って参加されることを願っております。 私の専門の音では、結論として集合住宅の床衝撃音での評価においてバングマシンの呪縛から開放させて、周囲騒音環境を考慮した許容騒音についての聴感実験に力を入れて行きたいと考えているところです。この考え方が学会で認知されるようになると、戸建住宅の音問題も十分対応が可能となると信じています。大変長々と書きまして、冗長をお許しください。皆様にはますますのご活躍をされることを祈念して、新年のご挨拶とさせていただきます。 |