テーマ断熱

 断熱材を使用して断熱をすることに、どんな意義があるのでしょうか?
 断熱材には3つの役割があると考えられます。

1)輻射熱をさえぎる

 夏、海水浴に行って直射日光が当る砂浜に30分座っていると暑さを我慢できなくなってきます。
 それがパラソルを立てた日陰の下や海の家の中では2〜3時間はそれ程苦痛には感じません。
 薄いビニールのパラソルやトタン屋根が1枚あるだけで、気温は同じでも暑さの感じ方は全く違ってきます。
 これは薄いビニールが太陽の輻射熱をさえぎったからです。
 気温(空気温度)は同じでも、そこへ太陽熱(輻射熱)が加わったために暑く感じたわけです。
 暑く感じた実気温を体感温度と言います。
 冬、暖房している部屋で室温を高めに設定していても寒く感じることが良くありますが、その場合、壁や床などが冷されていて冷気を感じて(冷輻射)しまうのです。
 床、壁、天井の冷輻射を防いで表面温度を室温と同じにすると体感温度が良くなります。
 床、壁、天井に正しく施工された断熱材があると室温は緩やかに外気側へ移動(熱貫流)しますので急激な熱移動が起こらず、室内表面温度は室温とほぼ同じになります。



 室温より1℃以上表面温度が低ければ、断熱材の施工が理想的であると言えます。

2)表面、内部結露の防止 

 結露をなぜ防がなければならないのでしょうか? 窓ガラスが濡れるとカーテンや内装材などが汚れて手入れが大変だ。
 一番分かりやすい話ですが、これは表面結露の代表的なものです。
 表面結露も放っておくと大変なことになりますから、ぞうきんなどで水滴を拭き取らなければなりません。
 問題は結露の後にカビが発生し、その栄養でダニが育ち、菌糸やダニの糞を吸い込むと、ぜんそくを招く原因になります。
 壁内部で結露(内部結露)が起きると木材は水分を吸収(含水)して木材の耐久性を奪います。
 木材の含水率が25%を超えると腐朽菌におかされやすくなるからです。


 このように結露は住宅の耐久性を損なうばかりか、人の健康にも重大な悪影響を引き起こします。
 結露の原因は、内外の温度差と湿度の条件がそろった時に発生します。
 例えば室温が20℃で湿度40%の空気がアルミサッシ枠のガラス表面5℃に接すると露点温度になり結露となります。
 これと同じ条件の室内空気が断熱施工がいい加減な壁内部に入った場合急激に冷されて、金物や釘などの外気温度に冷された金属に接すると露点温度に達して結露となってしまいます。
 ところが断熱材の施工が適正な壁内部では、暖められて湿った空気は断熱材を通して緩やかに外気温度に近づくので温度差がなくなり露点温度に達っしません。
 1)、2)では繊維系の断熱材(グラスウール、ロックウール、セルローズファイバー)を使用する場合は、室内側に防湿気密層を設ける必要があります。

3)省エネルギー化 

 断熱された住宅や建築物であっても冷暖房の設備が適切でないと、冬暖かく夏涼しく過ごすことはできません。
 窓や断熱性能を徹底的に高めても、暖房器具が全く必要がない住宅を建設することは大変難しいと言えます。
 しかし、冷暖房エネルギーはゼロにならなくても断熱性能を高めていけば、限りなく少なくすることはできます。
 せっかく、暖めたり、冷したりした熱を逃がさないことは、エネルギー問題の上で大切な要素です。
 我慢をして夏室内で熱中症になったり、冬は温度差のヒートショックで急病になり死亡事故につながるようでは、何のための省エネかわかりません。

断熱手法 壁 

 木造住宅では以前、外張り断熱か内断熱か[どっちが良い]の議論がありましたが、実際は、両方やらなければ大きな効果は望めません。
 外張り断熱工法は、断熱材ではない木材からの熱ロスを防止する上で効果が大きいのですが、外壁加重や建築の納まりなどの問題から厚さに限界があり、それだけでは充分な断熱性能を得られません。
 内断熱(正しくは充填断熱)は、柱の間に断熱材を充填(てん)させる工法で、木材が収縮、膨張を繰り返して、最終的に収縮してゆく過程で、木材の変形に追随する性質が要求されます。
 それには繊維系の断熱材が適しています。
 柱の寸法を大きく取れば断熱性能も良くなりますが、木材からの熱ロス(熱橋)は防げません。
 これら外張り断熱と充填断熱の特徴を踏まえ充填断熱+外張り断熱(付加断熱という)が、望ましい断熱施工の在り方です。  

 

 

  鉄筋コンクリート(RC)造では、外張り(外断熱)断熱以外は行なってはなりません。
 RC造は大きな熱容量があるために、駆体内側に断熱材を施工してしまうと、コンクリートは冷されているので、駆体と断熱材の間で結露が発生してしまいます(結露のメカニズム=冷たい所に暖かく湿った空気が接すると露点温度に達します) 床の断熱手法では、床面での断熱施工と基礎コンクリート外周部での基礎断熱工法の2通りがあります。
 床断熱工法では、大引+根太の高さに断熱材を充填できるので高断熱化が図れます。
 最近多くなってきた根太レス工法では、大引の高さだけしか充填断熱できず、充分な断熱性能を確保しづらくなるため注意が必要です。
  基礎断熱工法では、基礎コンクリート外周部で断熱施工が完結するため、工程が楽になるのと床面で断熱材がないために設備関係などの取り合いが無くなり気密化しやすくなります。
 基礎コンクリート外周部に断熱材を施工するので、もう一度仕上げ工程が必要になります。
 やはり厚みの限界も出てくるので性能には注意が必要です。
 また、シロアリの食害も予想されるため、その対策は万全にする必要もあります。
 このほか、気密性が確保されないと湿った空気が外から床下に流入してコンクリート面で結露が発生し、床下がカビてしまうので十分な気密性と室内空気の循環が必要です。
  天井断熱には平天井面と桁上断熱と屋根勾配なりの勾配天井断熱の3種類があります。
  平天井断熱は一番基本になるもので、天井材に直に断熱材を施工するので断熱層内気積が少ないので冷暖房効果やランニングコストが優れています。
  桁上断熱は、天井断熱での仕上面、電気、設備の取り合いなどを気にせずに進められるので気密性を確保しやすいと言えます。
 天井面と断熱層との気積が出来るので換気や冷暖房の措置を講じる必要がで出て来ます。
 発泡プラスチック系断熱材の場合は屋根が出来る前の建築中の施工が必須になります。
  屋根断熱 外張り断熱工法では、屋根垂木の上に断熱材を施工します。
 その上に合板系の面材を施工後屋根通気を確保する通気垂木を打って屋根野地合板と板金仕上などの工程になります。
 建て方時に断熱材施工も一緒になるので、工程管理や安全性の確保などの配慮と天候などにも左右されますので十分な注意が必要です。
 断熱性能面からも十分とは言い切れません。
  充填断熱工法では、屋根施工が終了してから室内側からの施工になるので、天候や転落の危険などを気にせず有利に進められます。
 屋根垂木が通気層となるため、その下からが断熱層になるので、十分な断熱厚さの確保が必要になります。
 天井断熱に比べて気積が増えるのと外気に直に接するため、厚さは最低でも1.5倍以上必要になります。